コンポジット枚数と高質化の関係 8枚か9枚か (長っ) [画像処理]
ベテランの方が見たら「は?何を今さら」という、つまらないことを歴2年に満たない私がダラダラ講釈を垂れてみる。。。
いや、何回かお話ししたことがあったのですが、ほとんどの方に理解して頂けませんでしたので、書いたら分かるかなぁという思いです。
このブログを将来的に放置することになっても、誰かが検索で飛んできて目に留まるかもしれない。
私はそんなブログやHPに随分と助けられてきました。
何の話しかと言えば、
「N枚重ねたら、N倍質が良くなることは無い」
正解は、√N倍です。
何故か。
N枚重ねるとシグナル(星や星雲。写真の決まった場所に観測される明るい信号)は確かにN倍になると考えても差し支えないです。
(ホットピクセルなど決まった場所に出るノイズはシグナル扱いとなりN倍になります。)
しかし、ランダムノイズも√N倍になります。
これは、分光学の特性です。詳細は他に譲ります。
ノイズは1/Nになる(2枚重ねたらノイズが半分になる)という方が多い印象です。
一方、いわゆるトーナメント方式と言われるコンポジット方法があります。
↓8つのフレーム(F1~F8)を重ねるモデル図です。
2枚ずつ重ねて、重ねたもの同士を重ねて・・・という方法。
1枚1枚の質をチェックしながらという意味でも、大変優れた方法です。
通常は2の累乗(べき乗)の枚数(2枚、4枚、8枚、16枚、32枚・・・)の枚数が必要です。
図中の%は完成図1枚に対する各々のフレームの寄与率になります。
3枚とか5枚とか、通常のトーナメントを組めない場合も一応、計算してこの方法でコンポジットすることは可能ですが、例えば9枚だったら1枚当たりの寄与率は1/9 = 0.111・・・枚となり、気持ちが良くは無いです。
フォトショップ等、マニュアルで重ね合わせる際は計算などの注意が必要ですが、ステライメージ等の各種ソフトウェアでコンポジットする際は7枚でも11枚でも中途半端な枚数のコンポジットを自動で行えますので、寄与率の「気持ち悪さ」さえ堪えられれば(笑)、大した問題では無くなりました。
このトーナメントを使って、コンポジット枚数と高質化を以下にまとめてみます。
↑シグナル強度が2のフレーム8枚をコンポジットすると、シグナルは8倍の16になります。
↑重ねれば重ねるほどノイズが減るとは、こういうことでしょうか。。。
ノイズが1の輝度であるフレームを8枚重ねると、トーナメントではこう書けます。
が、減るのは間違っています(輝度があるものを足して減るというのは論理が破たんしています)。
↑ランダムノイズに関してはこちらが正解。
2枚コンポジットしてノイズは√2倍。8枚で√8=2√2倍(約2.8倍)。
冷却CCDだろうが液体ヘリウムで-270℃まで冷やそうが、ノイズは出ます。
理想的にダーク減算がうまくいっても、ノイズは消えません。
横道に逸れますが、減算はげんざんです。げんさんでも間違えとは言えませんが、かなり一般から外れます。
減算値はげんざんちです。げんさんなら「源さん家」になっちゃいます。
結構、げんさんって言われることも多いです。。
ノイズが無いから大丈夫♪というのは、ノイズが眼で気にならないだけで確実にあります。
本当にノイズが無いというのはR=G=B=0です。クールピクセル(笑)
(↑間違ってます・・・ 9/6追記)
最終的に写真の質はシグナル―ノイズ比(S/N比)で表されます。
シグナル(星など)の輝度が2、ノイズの輝度が1の写真を8枚コンポジットすると下のようになります。
(そんな低質な写真も無いのですが)
S/N比が2の写真を8枚重ねると2の8倍の16ではなく、2の√8倍の4√2の絵が完成します。
一言で言ってしまえば、
「N枚重ねた時、シグナルはN倍、ノイズは√N倍、よってS/NはN/√N。有理化してS/N = √N」
100枚重ねると100倍の質の写真ではなく、√100=10倍です。
100枚も使って10倍かよって感じかもしれませんが、人間の目はそういった質感に対するダイナミックレンジが低く、10倍と言えば圧倒的に質がいいと感じるはずです。
私は今の所、一晩で完結したいタイプで、平日ともなるとそんなに時間も撮れません。
10分8枚を基本としています。撮れても8~12枚前後が多いです。
8枚は1枚の寄与率12.5%、S/N向上は√8=2√2(約2.8倍)。
もし9枚なら。
寄与率が割り切れなくて気持ち悪い気もしますが、コンピュータ任せで気にしないことにして(眼では全く分かりません)、S/Nは√9=3倍という気持ちいい結果となります。
数字にしちゃうと2√2倍も3倍も、目には変わらないかもしれません。
目に分かりにくくても、より高質化を望むためには、枚数がおかしくても多ければ多いほどよいことになります。
まぁ、数字遊びをすればこんな感じですが、実は均一な質の写真を多枚数用意することが一番難しく、また、そこが醍醐味で面白い所なんじゃないかと、、、今気が付きました(笑)
やっぱ、現場でニヤニヤしながら、時にブーブー言いながら撮るのが楽しいんですよね~。
いや、何回かお話ししたことがあったのですが、ほとんどの方に理解して頂けませんでしたので、書いたら分かるかなぁという思いです。
このブログを将来的に放置することになっても、誰かが検索で飛んできて目に留まるかもしれない。
私はそんなブログやHPに随分と助けられてきました。
何の話しかと言えば、
「N枚重ねたら、N倍質が良くなることは無い」
正解は、√N倍です。
何故か。
N枚重ねるとシグナル(星や星雲。写真の決まった場所に観測される明るい信号)は確かにN倍になると考えても差し支えないです。
(ホットピクセルなど決まった場所に出るノイズはシグナル扱いとなりN倍になります。)
しかし、ランダムノイズも√N倍になります。
これは、分光学の特性です。詳細は他に譲ります。
ノイズは1/Nになる(2枚重ねたらノイズが半分になる)という方が多い印象です。
一方、いわゆるトーナメント方式と言われるコンポジット方法があります。
↓8つのフレーム(F1~F8)を重ねるモデル図です。
2枚ずつ重ねて、重ねたもの同士を重ねて・・・という方法。
1枚1枚の質をチェックしながらという意味でも、大変優れた方法です。
通常は2の累乗(べき乗)の枚数(2枚、4枚、8枚、16枚、32枚・・・)の枚数が必要です。
図中の%は完成図1枚に対する各々のフレームの寄与率になります。
3枚とか5枚とか、通常のトーナメントを組めない場合も一応、計算してこの方法でコンポジットすることは可能ですが、例えば9枚だったら1枚当たりの寄与率は1/9 = 0.111・・・枚となり、気持ちが良くは無いです。
フォトショップ等、マニュアルで重ね合わせる際は計算などの注意が必要ですが、ステライメージ等の各種ソフトウェアでコンポジットする際は7枚でも11枚でも中途半端な枚数のコンポジットを自動で行えますので、寄与率の「気持ち悪さ」さえ堪えられれば(笑)、大した問題では無くなりました。
このトーナメントを使って、コンポジット枚数と高質化を以下にまとめてみます。
↑シグナル強度が2のフレーム8枚をコンポジットすると、シグナルは8倍の16になります。
↑重ねれば重ねるほどノイズが減るとは、こういうことでしょうか。。。
ノイズが1の輝度であるフレームを8枚重ねると、トーナメントではこう書けます。
が、減るのは間違っています(輝度があるものを足して減るというのは論理が破たんしています)。
↑ランダムノイズに関してはこちらが正解。
2枚コンポジットしてノイズは√2倍。8枚で√8=2√2倍(約2.8倍)。
冷却CCDだろうが液体ヘリウムで-270℃まで冷やそうが、ノイズは出ます。
理想的にダーク減算がうまくいっても、ノイズは消えません。
横道に逸れますが、減算はげんざんです。げんさんでも間違えとは言えませんが、かなり一般から外れます。
減算値はげんざんちです。げんさんなら「源さん家」になっちゃいます。
結構、げんさんって言われることも多いです。。
ノイズが無いから大丈夫♪というのは、ノイズが眼で気にならないだけで確実にあります。
(↑間違ってます・・・ 9/6追記)
最終的に写真の質はシグナル―ノイズ比(S/N比)で表されます。
シグナル(星など)の輝度が2、ノイズの輝度が1の写真を8枚コンポジットすると下のようになります。
(そんな低質な写真も無いのですが)
S/N比が2の写真を8枚重ねると2の8倍の16ではなく、2の√8倍の4√2の絵が完成します。
一言で言ってしまえば、
「N枚重ねた時、シグナルはN倍、ノイズは√N倍、よってS/NはN/√N。有理化してS/N = √N」
100枚重ねると100倍の質の写真ではなく、√100=10倍です。
100枚も使って10倍かよって感じかもしれませんが、人間の目はそういった質感に対するダイナミックレンジが低く、10倍と言えば圧倒的に質がいいと感じるはずです。
私は今の所、一晩で完結したいタイプで、平日ともなるとそんなに時間も撮れません。
10分8枚を基本としています。撮れても8~12枚前後が多いです。
8枚は1枚の寄与率12.5%、S/N向上は√8=2√2(約2.8倍)。
もし9枚なら。
寄与率が割り切れなくて気持ち悪い気もしますが、コンピュータ任せで気にしないことにして(眼では全く分かりません)、S/Nは√9=3倍という気持ちいい結果となります。
数字にしちゃうと2√2倍も3倍も、目には変わらないかもしれません。
目に分かりにくくても、より高質化を望むためには、枚数がおかしくても多ければ多いほどよいことになります。
まぁ、数字遊びをすればこんな感じですが、実は均一な質の写真を多枚数用意することが一番難しく、また、そこが醍醐味で面白い所なんじゃないかと、、、今気が付きました(笑)
やっぱ、現場でニヤニヤしながら、時にブーブー言いながら撮るのが楽しいんですよね~。
2014-09-04 00:38
コメント(8)
トーナーメント方式については非効率なので、いつも一括加算平均です。(メリットはあるのでしょうか?)
ただしメモリの制約から一度に処理できない時は、
例えば9枚コンポジットと8枚コンポジットに分けたものをコンポジットといった具合。
枚数を揃えるために1枚使わない、なんてもったいない事はしません。
(むろん10枚と7枚で、なんて事はしませんが)
天体写真におけるランダムノイズについては一般的なS/Nとは違うような気が・・
もし発生するランダムノイズのピクセル位置は変わったとしても、発生するノイズの量がほぼ一定ならば、
やはり枚数に比例してノイズのレベルは増加しているのでは・・
レベル比ではS/Nの改善が説明できないような気が・・
均一なノイズでもS/Nは悪化しますが、天体写真の場合はノイズ自体が均一でないことが最大の問題では?
ランダムゆえに枚数加算すれば均一化されていくわけですし。
それがなぜ√Nになるかはわかりませんが・・
by 雲上(くもがみ) (2014-09-04 05:07)
私もいつも一括加算平均です。雲上さん同様、多枚数の時は分割しています。
面倒ですもんね~(笑)
>もし発生するランダムノイズのピクセル位置は変わったとしても、発生するノイズの量がほぼ一定ならば、やはり枚数に比例してノイズのレベルは増加しているのでは・・
その通りだと思います。ノイズレベルは√Nに比例して増加しています。
ここで言うノイズレベルとは雲上さんが仰るノイズの量になると思います。
「量」は数でも輝度でも、数式上は同様に扱うことが出来ます。
>レベル比ではS/Nの改善が説明できないような気が・・
ノイズが√Nに比例するのに対し、シグナルはNに比例します。
重ねる枚数が多くなるにしたがって、シグナルとノイズの輝度の間には大きな差が生じます。
それはS/Nという単純な式で表せると思います。説明不足でしたがS/Nは日本語にすると「単位ノイズ当たりのシグナル量」となります。すなわち「相対的に」シグナルに対してノイズが減ると解釈はできます。
>均一なノイズでもS/Nは悪化します
場所が一定の均一なものは、式の上ではノイズとは扱われずシグナル扱いとなることから、単純に増幅されます(N倍になります)。よって見た目の改善は得られず、仰る通りS/Nは悪化すると思います。
>ノイズ自体が均一でないことが最大の問題では?
天体写真に限らず、ノイズは均一では無いことが定義の1つとなります。
(均一ならばノイズでは無くシグナル扱いとなります)。
均一でないものを多数回足し合わせることがN倍ではなく√N倍になる所以です。
場所がランダム、輝度もランダムな場合(輝度のばらつきは一定条件では均一であると近似できるかもしれませんが)、「数値として足すことができるか否か」は確率論になります。
輝度は一定値とすれば、単純に、ある場所にノイズの輝度があるかどうかの確率になります。
足せば足す程、シグナルはN倍、ノイズは√N倍。
ならば、多枚数足した時は写真は最終的に真っ白になるのか。
式の上での答えはYesです。
RAWから各ピクセルの輝度数値をエクセルか何かで足してしまえば、巨大な値となってR=G=B>bit数限界となり真っ白になります。
ただ、そうなりません。
画像処理ソフトウェア各種は、ノーマライズ(正規化)しています。
そのノーマライズからはみ出たところ(対応不能)な所を警告表示するソフトもあります(ココ、飛んでるよ~(14bitなら16384超えてるよ~))など)。
SIは対応ビット数が広く、事実上無限諧調となり、無理にでも表示しようとします。
実は素晴らしいことだと思っています。
このノーマライズにあたっては、1枚当たりの寄与率が1つの大事なパラメータとなります。
これはダイナミックレンジの問題でもあって、ある一定以上加算すると、相対的にノイズが減って加算の効果が眼では分からなると思います。。
しっかし、説明が下手ですね、私。
コリャ、営業職は務まらないですわ・・・。
と思って、検索したら、平方根に比例する話を分かりやすく解説されているページがありました。
冷却CCD販売元、田中光学工業様
http://www.tanaka-opt.co.jp/noise-calculation.html
by naopon2013 (2014-09-04 11:49)
naoponさん 詳しい説明ありがとうございました。
ノイズとはなにかということですね。
紹介された解説の ”ノイズはその近傍の信号のばらつき(標準偏差)”
と捉えればわかるような気がします。
by 雲上(くもがみ) (2014-09-04 12:17)
説明とか大それたものではく、「思い」を書いたら訳が分からなくなりまして、申し訳ありません。。。
いや、分光学が専門(だった)とか、そんな仕事と趣味の境界みたいな領域で、ちょっとモヤモヤしてたんですよね。。。
あまりに納得できない論理を通されたことがあって、その場では角が立たない様にぬる~~く対応するんですが、やはり変な思いが騒ぐと言うか何と言うかで。。
こんな場所ならいいかなぁと思っての事でした。
そうそう、天体写真って結局はアートなもので、対象物以外はノイズということなんですよね。
どうも自分の芸術的感性を信用できず、すぐ数理的な処理にいってしまいます。
なんて言うんでしょう・・・「汚くても納得した処理」とか、そんな感じです。
キレイならいいという世界だと思うんですが、キレイかどうかイマイチ判断に自信が無いというか・・・。
ちょっと絵画でも見て修行してきます(全く絵画趣味は無い・・・)。
by naopon2013 (2014-09-04 12:45)
いやぁ難しすぎてほとんど分かりませんが(笑)、 僕は美しい天体写真を撮るために、足し算なり掛け算なりでとにかく"光をかき集めれば有利"と思っていますが合っていますでしょうか?
明るい鏡筒でとにかく露出したいですんですよねぇ。晴れないけど。
by 龍之介 (2014-09-04 13:08)
詳しい説明ありがとうございます。
おもいっきり文系なので√と聞くだけで眠くなるんですが、わかりやすい図で理解できました・・・たぶん(汗)
私はチマチマとトーナメント方式でコンポジットしてます。
16枚の時はさすがに面倒ですけどね(笑)なんか、トーナメントの方が間違いないような気がして(笑)
「輝度があるものを足して減るというのは論理が破たん」 たしかにっ!!
液体ヘリウム冷却カメラを使ってもノイズは完全には消えないんですねぇ。
ちなみに私「げんさん」と言ってましたよ(笑) 「源さん家」(爆)
「げんざん」なんですね。娘に言って自慢しよっと(笑)
by おりおん (2014-09-04 17:33)
龍之介さん、こんちは~
ですね~、かき集める際、要らないノイズを抑えたいっていうのが一番なんですよね。
重ねまくればノイズが減るというロジックでは、龍之介さんのα7sでの速写大量コンポジットのアンドロメダが、理論上ベストになると思います。
一方で、長いこと露出して、あわーーーい所を綺麗に出したいですよね~。
長い露出には高感度よりも低ノイズが効く気がしていますので、冷却CCDかなぁという感じです。
by naopon2013 (2014-09-04 19:31)
源さん家にお住いの、おりおんさん、こんちは~(笑)
お、伝統的確実派のトーナメント方式ですか~。
晴れない日が長いこと続くと、私もたまにやってみてます。
確かに面倒ですよね。
間違いない気がするというのは何となく感覚的にわかります~。
足した感あるんですよね。
16枚一括だと、15枚と区別つかない(どのフレームが無いかさっぱり分からない)ので、トーナメントには安心感がある・・・気がします(笑)
でしょでしょ。足して減るっておかしいですよね・・・。
いや、相対的にシグナルに対しては減っているのでいいんですけどね。。
液体Heでもノイズは消えません。その前にカメラが壊れます(笑)
by naopon2013 (2014-09-04 19:37)